新世界の通天閣からほど近い場所にそのお店はある。
「TOWER KNIVES OSAKA」(タワーナイブズオーサカ)

500種類以上の包丁が壁一面に飾られたその店内は洗練かつ異空間。

身近なものから用途が分からないものまで様々で、見ているだけで
包丁という道具の奥の深さが感じられる。
ガラス張りの向こうの作業場では、職人が刃を研いでいる姿も見える

親切な店員さんが実演も兼ねてお薦めの包丁を説明してくれる。
料理初級者の私に合わせて幅広く使えるものを選んで頂く。
テレビショッピングのようにトマトが本当に薄く切られていく。
体験もできるが、自分で切るといつもの包丁との違いが歴然。
一回引くだけで切れる、すごい。
これは単なる体験ではなく、アミューズメント。
魔法とまでは流石に言い過ぎか。
でもハリーポッターの「オリバンダーの店」で杖を選ぶのはこんな感覚なんだろうか。
自分が包丁を選んでいるのか、はたまた包丁に選ばれているのか。

こんなこだわりのお店のオーナーさんと是非話がしてみたいと思ってお願いしてみたら
お忙しい中お時間を作って頂けた。本当に感謝。

カナダ出身のデンマーク人オーナー、ビヨン・ハイバーグさんと直接お話ができることに。
包丁が好きで、日本に来て、さらに深く勉強もして、包丁専門店まで作ってしまった熱意の人。
最初は苦労も多く、まずは全て自分で説明できるために日本語を猛勉強。
「外国人が和包丁のお店?」というお客様の不安を自ら払拭していったのだという。
開店10周年を迎えた今では日本人だけではなく、外国人観光客にも大人気のお店に成長。
最近は英語を話せるスタッフを増やしているというのもおもしろい。
土地勘のない中で、大阪のシンボルである通天閣の近くでお店を開きたいと思ったのだそう。
実際に行くと分かるが、通天閣の下と言ってもいいくらいの近さ。交通の便も大変良い立地。
「大阪人はほんと優しいよ」とビヨンさんは笑顔で伝えて下さった。
開店当初、お店の宣伝のために置いていた店頭のチラシがよく無くなったのだそう。
いたずらされているのかと思っていたある日、ふと入った近所の料理屋さんの壁にそのチラシが
貼られていたのだという。
そう、近所の商店街の方が新しく開店した包丁専門店を宣伝してくれていたのだ。
大袈裟でなく黙って応援してくれる大阪人の優しさに触れて、「ここに決めて良かった」と実感したそう。
ビヨンさんから、これから来日したいと願う海外の方々にメッセージを頂いた。
「日本の職人気質は素晴らしいんだ。だから私は自分が好きな和包丁にこだわっているんだ。
一度きりの人生なんで、自分が使うものや、ともに過ごす人や場所を大事にしてほしい。
そして、人生にこだわってほしいんだ。」
好きにこだわり、好きを仕事にし、それを極めようと走り続けるビヨンさんの人生を表した言葉でした。
まさに生涯職人魂。
「TOWER KNIVES OSAKA」では包丁の世界の新発見が続々です。
私にとってもまさに「新世界」でした。