人生って実に面白い。
時には、一皿の料理、人との出会いで人生が急激に変化する。
何気ないきっかけは日常の至るところに転がっているのかもしれない。
そんな奇跡のような偶然が重なりあった夜にふらっと友人と立ち寄ったメキシコ料理屋さん、
『ロティーチキンアンドジャッキータコス』
流れる陽気な音楽、響く店員さんの明るい声、賑わう店内は今でも踊りだしたくなる雰囲気を醸し出していて、自然と心が躍った。
第一章:生ハムに恋して、パンフレットを片手にセビージャへ
今年46歳となるオーナーの植本さんは、32歳の頃、飲食店を起業をしたい想いを抱きながらも、料理人でなかった植本さんが着目したのが生ハム。
最初に食べた生ハムの美味しさに感激し、三日後には原産国であるスペインに飛ぶ。※本当は翌日に飛んでいきたかったが、あいにくの満席。
何も調べずに生ハムのパンフレットを片手に握りしめて空港へ向かった植本さんに、客室乗務員が行先はどこかと尋ね、パンフレットに載ってるスペインの地図を見る。
バルセロナ…マドリード…ではない、地図上の豚のマークを指さしてここです。と伝え、生ハムの原産地に近いセビージャへ出発。
英語もスペイン語ももちろんできないまま飛び込んだ生ハムの世界。
本場の生ハムをもっと知りたい植本さんに現地の人は手厚く迎え入れてくれたという。
セビージャで立ち寄った生ハムのお店の話や、プラド美術館でのエピソードを聴けば聴くほど、植本さんは、強運な持ち主のように思われる。
帰国してから、立ち上げたいお店の姿が思い浮かんだ植本さんにまたもやサプライズが待っていた!
初めて食べた生ハムを輸入している大阪の会社の社長さんから電話があり、会う事になった植本さん。
スペインでの体験、生ハム屋をやりたいという熱い想いをぶつける植本さんに、社長さんはこう尋ねたという。
「生ハム屋で、生ハムをどうしたいねん」
生ハムを吊るしたいんです。と答える植本さんに社長さんは、たくさんぶらさがる生ハムを20本プレゼントしたという。
植本さんの生ハムへ対する情熱に共感した社長さんからのプレゼント。
なんと太っ腹(笑)食べ放題ですやん。
1本10万円ほどの生ハム20本(200万円相当)を店内に吊るし、スペインバルを始めた植本さん。そこから、始まる新たな物語。
第二章:メキシコを知らないメキシコ料理屋の想い
メニューを開いて真っ先に飛び込んでくるこの文字。
そこには、メキシコ料理屋を始めた理由、一人の友人との出会い、店名の由来が小説の始まりのように記されていて、筆者は不思議に思った。
本場の生ハムの味を求めてすぐスペインに飛び立った植本さんはなぜメキシコを知らないのだろうか?と。
「メキシコ料理は、日本でいえば中華料理と同じで、タイにはタイのメキシコ料理、アメリカにはアメリカのメキシコ料理のカラーがあって、本場を知らないからこそ、先入観なく僕にとってはすべてメキシコ料理と感じることができる。色んな国のメキシコ料理を試し、学び、吸収してから最後にメキシコに行って、改めて自分のやってきた事を確かめたい。」
現在も学びを深め続ける植本さんが、いつかメキシコに行くぞ!と決意する瞬間はどんな時なのだろうか。ととても楽しみである。
そして、店内にも京都らしい篠ソースが置いていて、ここには京都の”らしさ”が出てて面白い。
第三章:生涯の親友「アルちゃん」との出会い
メキシコ料理には欠かせない”パクチー”。
通常の水耕栽培で育ったパクチーとは違い、味や香りが際立つ土栽培のパクチーを探し求めて、三重県のパクチー農家を訪れた植本さん。
今後の植本さんの人生に多大なる影響を与えた「アルちゃん」との出会いがそこにはあった。
メキシコ料理が大好きだけど、本場のメキシコ料理を知らない植本さんと、本場のメキシコ料理を知っている「アルちゃん」との出会いはまるで必然。
お店の看板メニュー:『ロティーサリーチキン』※写真はハーフサイズ
代々伝わる家庭の味を息子の「アルちゃん」に教えた「アルちゃん」の母は、メキシコに嫁いだグアテマラ人。
日本で結婚し、お子さんのいらっしゃらない「アルちゃん」は、大切な家の味を植本さんだけに伝授したという。そしていつかは、植本さんの息子さんへ引き継がれるだろうこの味は、現在植本さん以外知っている人はいないという。
血縁を越えた、家族の物語。このように、家族のみならず、お店に訪れる方にも食べてもらえてるなんて、「アルちゃん」のお母様もきっと想像してなかったはず。
もっとお店に訪れる皆さんに知ってもらいたいと心から思わずにはいられなかった。
もちろんチキン以外にタコスやデザートも全て絶品。
最終章:情熱の源
自身の直感と本能に従い、点と点が線へと繋がる人生を歩み続ける植本さんに、最後に一言を頂きました。
『情熱は人を変える』
開店当時やコロナによる影響で苦戦を強いられる場面もあったものの、好きを仕事にしている植本さんが自信を持ってストレスがないと言っていたのが印象的である。
スペイン滞在時、ふと時計と電話を突然必要ないと感じ川に捨てた逸話も。
それくらい、先の事は深く悩まないで、やりたい情熱があれば、突き進め!そう背中を押してくれた植本さん。
偶然の出会いに感謝し、少しでも読者に筆者の情熱が届いたら嬉しいと思うのでした。(笑)
Nothing is impossible as long as you have passion! Muchos Gracias!