1945年の夏 まばゆい光ときのこのようなカタチをした雲が日本の空へとのぼった。
あれから77年を迎える今、私たちは戦争を知らない。
同じ地球をシェアし、住む住民として、なぜ傷つけあう必要があるのだろうか。
そう疑問に思うのと同時に、いつでも起こりうることなのだと意識しなければならないと感じています。
小さな戦争は、日々の日常生活から。
一人して同じ人間として生まれてこない、だからこそ、いかなる状況でも違いを受け入れ、愛をもって他者に接することが平和への小さな一歩として、いかに難しく尊いものなのか。
ここに居たいと願うことは罪ですか?
今年2022年の5月に公開された『マイスモールランド』
ストーリー:埼玉で家族と暮らす、クルド人のサーリャ。日本人と変わらぬ学校生活を送っていた彼女の生活は、在留資格を失ったことで一変してしまう。過酷な環境下で、彼女は東京に住む聡太と出会う。彼との出会いをきっかけに、サーリャは葛藤しながらも成長していく。
人間として、自分を確立する重要な要素の一つ「アイデンティティー」
10代の思春期で感じやすい葛藤、「外見」、「国籍」、「居場所」、「家族」、「自由」、「権利」などが
複雑に絡み合い、そのなかでも「ただみんなと同じように、普通の女子高生として生活を送りたい」主人公の想いに触れていく。
筆者も「普通」という言葉に苦しみ、思い悩んだ過去があることから、あらためて決して他人事とは思えない物語に、
————私たちになにができるのか。そう目に見えない心の訴えが作中から聴こえてくるようでした。
国を持たない最大の民族『クルド人』
クルド人は中東に住む山岳民族であるが、自分の国家を持たず、トルコ、イラク、イランとシリアにまたがって生活をしている。総人口は約3千万人で、世界では国家を持たない最大の民族集団と言われている。
トルコではエスニック・アイデンティティーを基準にした少数民族という概念が認められていないため、長年クルド語の教育が禁じられていたり、地域や名所からクルド語由来の言葉が排除されたりとクルド人アイデンティティーへの弾圧が激しかった。政治的にはクルド人はアイデンティティを捨てれば国会議員になったり、総理大臣になったいりしたが、クルドアイデンティティを表に出せば国家から激しい圧力を受ける。
————『中東の長年の課題:クルド問題—複眼経済熟作成』より引用
日本でも約2000人のクルド人が居住しており、劇中の舞台でもある埼玉県のなかでも特にクルド人が多くいる町—蕨市駅前周辺には多くのクルド人が居住していることから『ワラビスタン』と呼ばれることも。
(故郷のクルディスタンと蕨(ワラビ)を掛け合わせてメディアなどで呼ばれるように)
そして、在日クルド人であり、クルドと日本の架け橋として長年活動しているワッカス・チョーラクさんを訪ねに東京・十条『メソポタミア』へ
食べてみたいから、もっと知りたいに
以前から筆者は『メソポタミア』に行ってみたい!クルド料理とはどんな料理なのだろう?と興味を持っていました。
偶然にも冒頭にご紹介した映画を鑑賞し、劇中に出てきた料理を提供しているお店が『メソポタミア』と知ったことから、気持ちが行きたいから行くと決心し、人生初めてのクルド料理を体験すべくお店へ。
扉を開くと、異国情緒にあふれ、クルド語の本や辞書、装飾に囲まれた店内。
決して広くはないけどとてもアットホーム。
メニューには見た事のない料理の数々。一体どんな味がするのだろう?
ワクワクしながら頼んだ一皿。
クフタビイチ(ひき肉団子のブルグル包み揚げ)にシェヘリエピラフとじゃがいもとピクルス添え。
羊のひき肉が使用されていて、衣も香ばしく日本のコロッケみたいな食感で美味しかったです。
もう一品クルドの家庭料理でもあるヨーグルトスープも頼んでみました。
中にはミントと麦が入っている冷たいスープ。
ヨーグルト特有の酸味が強いですが後味さっぱりしているので、夏にぴったりです。
クルドのことをもっと日本人に知ってもらいたい
鼻歌を歌いながら料理をするワッカス・チョーラクさんは、実は料理人だけではない顔も。
日本にはトルコ料理店が数多く存在するが、7割はクルド人が経営しており、料理もほぼクルド料理という。
もっとクルドのことを知ってもらいたい、そんな想いからトルコ料理ではなくクルドの家庭料理を提供するお店として、2017年に『メソポタミア』を開店。
そんなワッカス・チョーラクさんは、時には大学で教壇に立ったり、日本クルド文化協会の事務局長として活動するなど活動の幅が実に広い。
現在では、日本文学の翻訳、クルド語の辞書や教科書などの作成、多数のメディアにも主演するなど、国を持たない故郷の文化を守り、同じルーツを持つ仲間の為に日々活動を続けております。
『メソポタミア』はひとつのきっかけとして、知ってもらえたら——そう語るワッカス・チョーラクさん
記念写真に某雑誌の表紙にも飾った本棚の前でパシャリ。女性の方はオーナーのファティーマさん
最後にいただいたメッセージ「これからも故郷であるクルドの文化を日本人に知ってもらいたい」
新型感染症の消息後には、さらなる活動の場を広げるであろうワッカス・チョーラクさん。
ワッカス・チョーラクさんのように、海外の地で愛する故郷の文化を守り、伝える活動をする難しさや葛藤、実を結んだ時の喜びを想像しつつ、
私にはなにができるのか。自分自身に問いかけ、筆者は微力ながらもこのブログを含め、愛のある行動・発信する大切さを感じるのでした。