『星月夜 ほしつきよる』自由になれると思っていた。

こんばんは、Local Tourist(ロカツリ)です。

今夜も独り言に付き合ってくれるみなさん、ありがとう

みなさん、ご無沙汰しております。

春のなごりからあっという間に初夏と季節が移り替わりましたね。

この約2か月の間にもちろん様々な出来事がございましたが、言葉がなぜか出てこない日々でもありました。

遠方に居る家族や友人を訪ね、読みたかった本を読み、練習したかった曲を弾き、行ってみたかった場所へ行くなどとてんこ盛りのなか、体が追いつかなかったのか2か月の間1か月は療養にあてるほど両極端な生活。

そして帰省最終日の今日、何かが私のなかで完成され、また少し生まれ変われた感覚を持てたことからまた書きたい想いが出てきたのです。

今日は文学的なお話。先ほど読み終えた小説からシェアしたい内容を書きたいと思います。

『星月夜 ほしつきよる』

台湾で購入した一冊の小説の名前です。

作者の李 琴峰(り ことみ)さんは日本在住の小説家、自身の作品を自ら日本語と中国語で執筆・翻訳をし、過去には芥川賞を受賞しています。

書店に立ち寄った際に、巻かれた帯に書かれていた「台湾籍初の芥川賞作家」、「母国を離れたら、自由になれるのだろうか(直訳)」に引き込まれ思わず本書を手に取りました。

日本語版と悩んだものの、台湾・中国・ウイグル自治区出身の登場人物が多く出る事からより深く理解したい想いから中国語で読むことに。(読み終えて初めて知ったのですが、原文は日本語版だそうです。)

今まで、中国語の小説は興味もあるし買ったことあるものの、全く読む気になれなかったのですが、小説というある意味フィクションの世界から日本で生活する外国籍の登場人物を通して彼らの心情を想像し、日本を客観的に見るという点は非常に新鮮で、個人的主観ですが、中国語で読むことでよりリアルに体感できたように思います。

いわば字幕で映画を観るのと似た感覚。

ネタバレになってしまうので、内容に関しては詳しく書きませんが、印象的だった台詞と場面をみなさんと共有したいなと思います。※より簡潔に伝える為、異なっている表現で書かせていただいてます。

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シーン①ウイグル自治区出身の主人公Bが元ルームメイトから(中国出身)中国へ戻ると話を聴いた直後の会話

主人公B:「君はどうして日本に来たいと思ったの?」

ルームメイト:「逃げたかったんだ。国籍・性別・年齢と、自分を縛るあらゆる世間の『カテゴリー』から。ずっと息苦しかった。」

ルームメイト:「でも、日本に来て気づいたんだ。どこへ行ってもその縛りはやってくる。一つ逃れたとしても、また違う『カテゴリー』の箱に押し込まれるんだ。そして自分自身もどこかでカテゴライズされずにはいられないんだと思う。」

このルームメイトが発した世の中のあらゆる束縛から逃れたい気持ち、そして自由になれたかに思えたのは一瞬で実は真の自由を手に入れた訳ではないと悟り、逃げるのを諦めて受け入れる。

私も同じ言葉を発したことがありました。

狭い世界から飛び出したい気持ちから高校は東京へと進学するこを決め、育った場所と異なってなんでも手に入るこの場所で晴れて私は自由の身になれると想えた。

でも、すぐに私は悟った。「どこへ行ってもこの気持ちは消えることはない。」と。

シーン②台湾出身の主人公Aがある手紙をきっかけに、主人公Bに対し想いを馳せていた時

「単純に言語上の要因であれば、確かに私の方が主人公Bと心を通わせることは可能なのかもしれない。そうだとしても、私は主人公Bのことを本当に理解をしているのだろうか?彼女が生まれ育った環境、信仰、そして置かれている環境、知ったつもりでいても、本当に理解していると言えるのだろうか?

それにしても、一人の人間として、「理解する」というのは、どこまで理解をしていればその人を「理解」していると言えるのだろうか?考えれば考えるほど沼にはまっていく。」

理解というのはとても難しいもので、私もよく大切な人と「理解」について議論をしますが、関係が深くなるにつれてややこしくなっていくように思えます。

特に好意を持っている人に対してはなおさら。100%理解することはできないとわかっていながらも、一人の人のことを「理解したい・理解した気でいたい」と想うのは人間に備わっている欲望の一種なのだろうか。

もしくは、「理解したい・理解されたい」と想い合えること自体が心が通っている人同士の特権なのかもしれない。

シーン③主人公AとBが星月夜を眺めていた時

「明日もしかしたら、星も月も消え、離れ離れになるかもしれない。それでも今、星と月は一緒の空間で寄り添い合っている。もし、この瞬間にふさわしい詞がないのなら、新しく創ってしまおう。」

このシーンを読んで言葉という制限を越えた自由を私は感じました。

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この小説では、政治・言語・LGBT等の題材のほかに、言語学習者なら必ずぶちあたる壁や葛藤をリアルに描写していて、且、外国人日本語学習者の目線で読むことで、母国へ帰国してしまった友人の気持ちが少しだけ理解することができたような気がします。

言葉が通じないもどかしさ、通じ合っている人を見て羨み、もっと話をしてみたい、文化に触れてみたい気持ちが今でも言語学習のモチベーションとなっている。

短い人生のなかで、より多くの人と喜びを共有することができますように。

そして、少しでも『国籍』、『言葉』、『性別』をとっぱらったありのままの自分で世界と通じ合えることができる世の中となりますように。

独り言に付き合ってくれて、ありがとう。

おやすみなさい。お疲れ様

追記:Youtube視聴中にこの曲のファーストテイクが広告として出てきたことがあまりにタイムリーすぎるので、ぜひ読み終えた後に聴いてみてください~

由薫 – 星月夜 / THE FIRST TAKE

By Local Tourist(ロカツリ)

Hello, I am the writer of this blog. Local but at the same time im a tourist too! :D

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